『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』を読んだ

どんな本か

「失敗=悪」。これが世間の常識です。だから誰もが「失敗などしたくない」と思いながら仕事をしています。 「失敗したら上司に叱られる…」 「 問題を起こせばまわりに迷惑をかけてしまう…」 「 失敗したら責任をとらされる…」

このような事態が想定できるからこそ、 「失敗しないように無難に進めよう」 「失敗したら、バレないように隠してしまおう」 「いざとなったら力技でごまかそう」 という発想になってしまいます。しかし、「失敗は避けなければならないもの」という意識でいるかぎり、失敗から目をそらす姿勢が強くなります。そして同じような失敗を繰り返すことになり、事態は悪化していきます。また、新しいことや困難なことへのチャレンジにしり込みするので、職場のチームも自分自身の成長も減速します。

トヨタの現場の第一線で活躍してきたトレーナーたちが、口をそろえて証言していることがあります。 「トヨタの現場では、たくさんの問題やトラブルが起きる。でも、『失敗』という言葉はほとんど聞かなかった」 もちろん起きた現象だけをとらえれば、トヨタにもミスやトラブルなど大小さまざまな失敗がありますが、少なくとも現場レベルでは「失敗」という概念は存在しません。失敗したことをそのまま放置したら、それは文字通りの「失敗」に終わってしまいます。しかし、失敗に正面から向き合い、次に活かすことができれば、その失敗は改善プロセスのひとつとなります。「失敗」が「失敗」で終わらないのです。

現場のメンバーが知恵を絞って、「なぜ不良が起きたのか」を徹底的に考えます。そして、問題を引き起こしていた原因を突き止めて、二度と不良が出ないような対策を実施し、そのしくみは、他のラインや工場にも展開することで、組織として強くなっていくのです。

つまり、トヨタの現場では、問題やトラブルをよりよいモノづくりをするための「改善の機会」ととらえているのです。 トヨタの現場で働く人たちにとって「失敗」とは、改善へとつなげるチャンスであり、成果に結びつける「宝の山」です。 (はじめにより)

Amazon.co.jp より

所感

いろんな職場で使えそうな実践的な内容だった。上の抜粋を読めば大事なところがなんとなくわかるかもしれない。

「失敗=悪」ではない

失敗は改善のタネで宝の山。これが一番大事だと思った。今まで、失敗についてじっくり考えたことがなかったが、当然のように失敗は悪いことだと思っていた。

できれば失敗は避けたいし、もし失敗したら隠したい。そう思っていた気がする。

この本を読んで失敗は悪ではないとわかっても、実際に仕事をする中で、失敗を隠したい気持ちをゼロにできるだろうか?

自分の無知やミスをさらけ出しても責められたりバカにされたりすることがない、心理的安全性が確保されている職場なら、可能だと思う。この本の中で「心理的安全性」という言葉自体は出てこないが、トヨタでは、工場で異常を見つけてラインを止めた作業員を誰も責めたりすることはなく、むしろ奨励されているという。そうやって問題を小さいうちに発見し、改善を続けていくことが大事なのだと知った。

心理的安全性が低く、失敗したとき個人が責められるような職場だと、失敗を宝の山と考えるのは難しいだろう。先日読んだ 不機嫌は罪である (角川新書) という本にも似たようなことが書いてあったのを思い出した。みんながニコニコして明るい職場は、離職率が低くなり業務効率が上がるそうだ。Googleによる調査で、生産性の高い職場にもっとも重要な要素が「心理的安全性」とされたことにも触れられていた。

心理的安全性が高いと生産性が高まると聞いて、メンタルが仕事の生産性にまで影響を与えるのかと漠然と考えていたが、今回『トヨタの失敗学』を読んで、生産性が高まる理由がわかった。それは、失敗を隠すことがなくなるだけでなく、日頃からさまざまな情報が共有され、ちょっとした気づきの段階で失敗の芽を摘み取ったり改善したりしていくことが可能となるからだろう。

エンジニアは、気をつけていてもバグを一度も出さない人はいないので、この「失敗学」の考え方はとても大事だと思った。

失敗から学び、改善してよりよくすることができれば、それはもはや失敗ではなく成長の1ステップ。

大事だと思ったことをメモ

  • 「失敗=悪」ではない
  • 失敗を放置したら文字通りの「失敗」になってしまう
  • 失敗は宝の山、改善のタネ
  • 失敗したら真因を追求する
    • 何が起こった?
    • なぜなぜ5回
  • 失敗しても個人の責任にしない
    • 真因ではない
    • 失敗が隠されるようになる
    • チャレンジしない組織になってしまう
  • 「人はミスをするもの」という前提で失敗しないしくみをつくる
  • 小さい問題は繰り返されたり、後で大きい問題になったりする
  • 問題が小さいうちに、自らの意思で問題を明るみに出す
  • よその失敗を自分ごとととらえて対策を講じる
  • 明るい職場は「失敗」が隠れない
  • あきらめずに前進を続ければ「失敗」にはならない